IBDと予防接種💉

【予防接種って受けてもいいの?】

毎年冬になると、「インフルエンザワクチンを接種してもよいのでしょうか?」というご相談を多くいただきます。感染症が流行する時期になると、ワクチン接種の必要性を感じる一方で、不安を抱かれる方も少なくありません。今回から全3回にわたって、こうした疑問についてお答えしていきます。

まず前提として炎症性腸疾患だから予防接種を受けられないということはありません。重要なのは、免疫抑制治療を現在受けているかどうかです。免疫抑制治療にはステロイド、免疫調節薬・抑制薬、生物学的製剤、JAK製剤、S1P製剤などが含まれます。免疫抑制治療を受けていない場合は、基本的に一般の方と同様に各種ワクチン接種が可能です。

そして免疫抑制治療中の場合でも、不活化ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナなど)は接種可能とされています。ただし、生ワクチン(麻疹・風疹ワクチン:MRワクチン、水痘ワクチンなど)については接種できないため注意が必要です。

ワクチンの種類や接種について迷う場合は、自己判断せず遠慮なく主治医へご相談ください。

⭕️不活化ワクチン

私たちの体には免疫という、ウイルスや細菌と戦う力があります。しかし初めて出会うウイルスに対してはすぐには対応できず、重い症状が出てしまうことがあります。そこであらかじめ、ウイルスを弱め、無害化したものを体内に入れておくことで免疫に覚えさせておく作業が予防接種(ワクチン)なのです。

不活化ワクチンはウイルスや細菌を死んだ状態や感染できない状態にして作ったワクチンのことです。そのため、体の中で増殖することがなく、免疫抑制治療中の方でも安全に接種が可能とされています。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン、新型コロナワクチンなどが代表例です。

一方で免疫抑制療法中は、ワクチン接種の効果はやや弱まる可能性も指摘されています。ただし重要なのは、効果が弱まる可能性がある=接種しても意味がないではないという点です。多くの場合、一定の予防効果は期待できるため、IBD患者さんにおいても不活化ワクチン接種は推奨されています。

❌生ワクチン

生ワクチンとは、病原体を弱らせた状態で使用するワクチンで、体の中でわずかに増殖することで強い免疫をつくる特徴があります。代表的なものには、麻しん・風しんワクチン、水痘ワクチン、BCGなどがあります。

しかし、生ワクチンは体内で増殖する性質があるため、免疫抑制療法中の患者さんでは、まれにワクチン由来の感染症を起こすリスクがあるとされています⚠️。そのため、多くの場合、免疫抑制療法中の生ワクチン接種は推奨されません。可能であれば免疫抑制療法を開始する前に必要な生ワクチンを接種しておくことが望ましいとされています。

すでに免疫抑制療法を受けている場合に生ワクチンを接種する必要がある場合は、免疫抑制薬を中止してから3か月以上の期間を空けて接種することが目安とされています(薬剤によって期間は異なることがあります)。 一方で、ベドリズマブ(エンタイビオ®)は、IBDの免疫抑制治療で唯一、生ワクチン接種が可能とされています。 

IBD患者さんでは、治療内容によってワクチン接種の可否やタイミングが変わるため、接種を検討する際には必ず主治医と相談し、計画的に進めることが重要です😀

この記事を書いた人

橋本 悠
橋本 悠医療法人石井会 石井病院
【資格・所属】
日本炎症性腸疾患学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
医学博士

炎症性腸疾患に関する研究や論文を多数執筆。
2017年より横浜市立大学附属市民総合医療センター IBDセンターで診療・研究に従事。
2019年に地元・群馬へ戻り、炎症性腸疾患チームのリーダーとして診療を継続。
2025年より石井病院にてIBD診療を担当し、2027年には県内初となるIBD専門外来を開設予定。