潰瘍性大腸炎のくすり:S1P受容体調節剤とは?

4月から長期処方可能となった潰瘍性大腸炎のくすり:S1P受容体調節剤とは?

昨年、潰瘍性大腸炎の治療に新しく登場したS1P受容体調節剤は、これまでの薬とは異なる作用を持つお薬です。体の中にはリンパ球という免疫細胞があり、炎症を引き起こす原因になります。この薬は、リンパ球がリンパ節から血液中に出ていくのを抑えることで、腸に集まる炎症のもとを減らします。
これまでの治療では注射や点滴の薬も多くありましたが、S1P製剤は内服で治療できる点が大きな特徴です。中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対して使用されることが多く、これまでの治療で効果が不十分だった方にも新たな選択肢となっています。

新薬は2週間ずつしか処方できないという制限がありますが、S1P受容体調節剤であるゼポジア®️がこの4月から長期処方が解禁されましたので今後処方となられる方も多くなるかと思います。

これまでの薬と同様にS1P受容体調節剤にも利点、欠点がありますので全ての方で使用できるわけではありません。
※クローン病の方では現在適応の薬ではありません。

S1P受容体調製剤の種類と使い方

現在、日本で潰瘍性大腸炎に使用されているS1P受容体調整剤には、「オザニモド(ゼポジア®)」と「エトラシモド(ベルスピティ®)」の2種類があります。
このうち、2026年4月から長期処方が可能となったのはゼポジア®であり、ベルスピティ®については同年9月頃から2週間を超える長期処方が解禁される見込みです。

いずれの薬も、5-ASA製剤やステロイドで十分な効果が得られない潰瘍性大腸炎の方が対象となります。1日1回の内服で使用し、継続することで徐々に効果を発揮するのが特徴です。

また、S1P受容体調整剤は少し特殊な使い方をする薬でもあります。ゼポジア®では、開始時に少量から徐々に増量する漸増をスターターキットに沿って行います。これは、徐脈(脈が遅くなる副作用)によるふらつきや気分不快を予防し、体を薬に慣らすための工夫です。

治療の選択肢の一つとして知っておいていただき、主治医と相談しながら自分に合った治療を見つけていきましょう。次回は「S1P受容体調節剤を使うときに注意すること」を配信いたします。

※クローン病の方では現在適応の薬ではありません。

S1P受容体調製剤を使う時の注意事項⚠️

 S1P受容体調節剤は飲み薬のため通院の負担が少ないお薬です。ただし、安全に使うためにはいくつか大切な注意点があります❗️ 

まず、特徴的な副作用として徐脈(脈が遅くなる)があります。徐脈が起こると息切れ、めまい、ふらつき、だるさなどの症状が出ることがあります。 また、眼の異常(黄斑浮腫)が報告されているため、目のかすみや視力低下の確認、必要に応じた眼科検査が大切になります👀  少しでも違和感があれば、遠慮せず主治医に相談しましょう☺️

 他の潰瘍性大腸炎治療薬と同じく免疫の働きを調整する作用があるため、風邪や帯状疱疹などの感染症にかかりやすくなる可能性があります🤧  肝機能の変化や白血球数の低下などがみられることもあるため定期的な採血や検査が重要です。

加えて、妊娠中の方や妊娠を希望されている方には使用できないお薬のため、事前に必ず医師へ相談する必要があります。

安全に使うためには、医師の指示を守りながら、体調の変化をしっかり共有していくことがポイントです💡

この記事を書いた人

橋本 悠
橋本 悠医療法人石井会 石井病院
【資格・所属】
日本炎症性腸疾患学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
医学博士

炎症性腸疾患に関する研究や論文を多数執筆。
2017年より横浜市立大学附属市民総合医療センター IBDセンターで診療・研究に従事。
2019年に地元・群馬へ戻り、炎症性腸疾患チームのリーダーとして診療を継続。
2025年より石井病院にてIBD診療を担当し、2027年には県内初となるIBD専門外来を開設予定。