消化管の意外なやくわり?

幸せホルモン:セロトニンとは?

消化管といえば、消化・吸収を行う臓器という印象が強いですよね。
しかし、消化管の役割はそれだけではありません。

幸せホルモンとして知られるセロトニンをご存じでしょうか。
セロトニンは、感情の安定や睡眠、自律神経の調整に深く関わる重要な物質です。そして実は、その約90%が腸で作られているといわれています。

そのため腸内のバランスが乱れると、不眠や気分の落ち込みなど、心の不調につながる可能性があります。またセロトニンは腸の蠕動運動にも関与しており、バランスの乱れによって便秘や下痢を引き起こすこともあります。こうした変化は、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群の症状にも関係しています。さらに腸と脳は密接に連携しており(腸脳相関と言います)、腸は「第二の脳」とも呼ばれます。ストレスがお腹の症状として現れるのはこのためです。

腸の状態を整えることは心の安定につながり、心を整えることが腸のバランス改善にもつながります。良質な睡眠やしっかりとした休息、規則正しい生活を意識することが炎症性腸疾患の治療にも良い影響を与えていきます。

免疫力を整える?

消化管の意外な役割の一つが、免疫力を整えることです。
免疫力とは、細菌やウイルスなどの異物から体を守る働きのことを指します。

腸は外から入ってくるさまざまな細菌やウイルスと常に向き合っており、体内でも特に重要な免疫の場となっています。この働きを支えているのが腸内細菌(腸内フローラ)です。腸内細菌は免疫のバランスを整え、感染を防ぐだけでなく、アレルギーや炎症のコントロールにも関わっています。

しかし、ストレスや食生活の乱れ、抗生物質の使用などによって腸内環境が崩れると、免疫のバランスも乱れやすくなります。その結果、感染症にかかりやすくなったり、アレルギーや炎症が悪化することがあります。

潰瘍性大腸炎やクローン病でも、この免疫のバランス異常が大きく関与していると考えられています。実際に免疫を抑制する治療を行うことで炎症性腸疾患の炎症を抑えている方も多くいるかと思います。

腸の状態を整えることは、単にお腹の調子を良くするだけでなく、全身の免疫力を整えることにもつながります。

次回は、じゃあ実際に腸の状態を整えるにはどうしたら良いか、、。 「腸を元気にする3つの大切なこと」を配信いたします。

腸を元気にする大切な3つのこと

腸の健康を支えているのは腸内細菌(フローラ)です。このフローラは日々の生活習慣に大きく影響を受け、IBDの経過にも関わる重要な要素です。フローラを整え、腸を元気に保つために意識したい3つのポイントをご紹介します。

まず①食事です。栄養バランスを意識し、納豆などの発酵食品を取り入れることで腸内環境の改善が期待できます。ただし、症状が強い時期には無理をせず、消化に優しい食事へ調整することが大切です。自分の体調に合わせた食事選びが基本となります。

②運動は、軽いウォーキングやストレッチなど無理のない範囲で継続することがポイントです。腸の動きを促すだけでなく、ストレス軽減にもつながり、結果的に腸の炎症コントロールにも良い影響を与えます。

③睡眠も見逃せません。睡眠不足や生活リズムの乱れは自律神経のバランスを崩し、腸の働きを低下させる原因になります。できるだけ毎日同じ時間に寝起きし、質の良い睡眠を確保しましょう。

これらの生活習慣を整えることは、症状の安定や再燃予防につながります。日々の小さな積み重ねが、IBDと上手に付き合うための大切な土台になります。

この記事を書いた人

橋本 悠
橋本 悠医療法人石井会 石井病院
【資格・所属】
日本炎症性腸疾患学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
医学博士

炎症性腸疾患に関する研究や論文を多数執筆。
2017年より横浜市立大学附属市民総合医療センター IBDセンターで診療・研究に従事。
2019年に地元・群馬へ戻り、炎症性腸疾患チームのリーダーとして診療を継続。
2025年より石井病院にてIBD診療を担当し、2027年には県内初となるIBD専門外来を開設予定。