CRPが正常なら安心?

CRPが正常なら安心?

血液検査でよく調べるCRPは、体の炎症を反映する代表的な検査です。CRPが高いと体のどこかで炎症が起きている可能性があり、逆に正常であれば大丈夫と思われる方も多いでしょう。

しかし、炎症性腸疾患(IBD)では、CRPが正常でも腸には炎症が残っていることがあります。 特に潰瘍性大腸炎では、病気が活動していてもCRPがほとんど上昇しない患者さんも少なくありません。そのため、CRPが正常だからといって、腸の炎症が完全に治っているとは言えないのです。

一方で、CRPは腸の炎症だけを反映する検査ではありません。 肺炎や尿路感染症、風邪など、体のほかの場所に炎症があっても上昇します。そのため、CRPが高いからといって、必ずしもIBDが悪化しているとは限りません。

現在のIBD診療では、症状が落ち着いていることに加え、腸の炎症そのものが治まった「粘膜治癒」を目標に治療を行います。そのため、CRPだけで病気の状態を判断するのではなく、LRGや便中カルプロテクチン、必要に応じて内視鏡検査などを組み合わせて総合的に評価することが大切です。

CRPだけでは見えない炎症を見つけるLRGと便中カルプロテクチン

近年、IBD(炎症性腸疾患)の炎症をより正確に調べるために、LRGと便中カルプロテクチンという検査が広く使われるようになってきました。

LRGは、血液で調べる検査です。同じく炎症を調べる検査であるCRPではわかりにくい腸の炎症を見つけられることがあります。 そのため、病気の状態を知るのに役立ちます。

便中カルプロテクチンは、便を使って調べる検査です。腸に炎症があるほど数値が高くなり、腸の中の炎症をよく調べることができます。症状がなくても炎症が残っていないか、反対に症状があっても炎症が少ないのかを調べるのに役立ちます。

CRPが正常でも、LRGや便中カルプロテクチンが上昇してきている時には注意が必要です。ただし、どちらの検査も原則として3か月に1回までしか受けることができません。また、内視鏡検査を受けた月には行うことができません。

それぞれの検査には得意なことと苦手なことがあります。そのため、症状やCRP、LRG、便中カルプロテクチン、必要に応じて内視鏡検査を組み合わせることで、病気の状態をより正しく知ることができます。

最終的な答えは内視鏡にある

血液検査や便検査は、炎症の状態を知るためにとても役立ちます。しかし、腸の中を直接見ているわけではありません。

実際に潰瘍がどのくらい治っているのか、炎症が残っていないかを確認するためには、内視鏡検査(大腸カメラ、小腸カメラ、胃カメラなど)が最も重要です。

現在のIBD治療では症状が改善するだけではなく、内視鏡で粘膜がきれいに落ち着いている状態(粘膜治癒といいます)を目標とすることが推奨されています。粘膜治癒が得られると、再燃や入院・手術のリスクを減らせることがわかってきています。

もちろん、毎回内視鏡検査を行う必要はありません。その間はCRPやLRG、便中カルプロテクチンを活用しながら病気の変化を確認し、必要なタイミングで内視鏡検査を行います。

つまり、IBDの診療では「CRP」「LRG」「便中カルプロテクチン」「内視鏡」がそれぞれ役割を分担しています。一つの検査だけに頼るのではなく、それぞれの結果を組み合わせることで、より適切な治療につながるのです。

この記事を書いた人

橋本 悠
橋本 悠医療法人石井会 石井病院
【資格・所属】
日本炎症性腸疾患学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
医学博士

炎症性腸疾患に関する研究や論文を多数執筆。
2017年より横浜市立大学附属市民総合医療センター IBDセンターで診療・研究に従事。
2019年に地元・群馬へ戻り、炎症性腸疾患チームのリーダーとして診療を継続。
2025年より石井病院にてIBD診療を担当し、2027年には県内初となるIBD専門外来を開設予定。